project story

ローカル5Gプロジェクト
国内ベンダーとして参入を
黎明期を生きる開発者たち

2019年に立ち上がった、ローカル5Gプロジェクト。これまでAPRESIA Systemsは有線領域の開発に携わってきたが、無線領域については今回が初めての挑戦となる。次の事業の柱として期待されるこのローカル5Gプロジェクトは、どのようにして生まれ、どのように進められているのか。プロジェクトオーナーの鈴木亮介が、プロジェクトの過去と現在、そして未来を語る。

project owner

次世代推進本部 副本部長
兼 第一部 部長
兼 営業本部 第一部 部長

鈴木 亮介

Ryosuke SUZUKI

黎明期

近年、世間の注目を集めている5G。“超高速・多数同時接続・低遅延・高信頼”の新たな無線ネットワークの登場に熱い視線が送られるなか、地方自治体や地域企業がより大きな期待を寄せているテクノロジーがある。それがローカル5Gだ。
「この技術があれば、企業等が自社でコントロール可能な独自の5Gネットワークを構築することができる」と語るのはプロジェクトオーナーの鈴木。
将来的には「すべての作業、機械操作を自動化したスマートファクトリー」の建設も夢物語ではなくなると言う。だが、現状ではこのような未来を実現することは難しい。できたとしても、全国には普及しないだろう。なぜなら、企業単体では手が届かないほど設備が高額だからだ。国内通信キャリアは、数千億円を投資して5Gの基地局などを導入している。これほどのハイスペックは不要としても、日本にはグローバルベンダーが開発した数億円規模の製品しか存在していない。
「そこにチャンスがある」と思った鈴木は、高品質かつ低価格な“国内ベンダーによる製品”を夢みるようになる。

未知への門出

創業からの歴史のなかで積み重ねた“信頼”が功を奏したのだろう。APRESIA Systemsは時流が動くその前から、ネットワーク業界がローカル5Gに傾くという情報を顧客から掴んでいた。
「様々な分野のお客様たちが新規事業の種として注目していることは把握していましたし、市場は今後間違いなく伸びていくと考えていました」と語る鈴木は、しかし、と言葉を繋ぐ。
「当社は有線領域で成果を収めてきた会社です。無線は全くの未知の領域。実現できるかどうかについては確信が持てませんでした」。だが、お客様に言われた言葉が鈴木の決断を後押しした。『御社は、有線領域で顧客の一つひとつの要望に応えてくれた。無線領域でも、大企業にはできない、地方自治体や地域企業にぴったりの製品が作れるのではないか』と。早速、鈴木は検証を開始する。
メンバーとともに製品開発に必要な技術を調べ上げ、「標準化された技術を用いて最適化していけば、全ての内製は難しくても製品の核となる部分は自分たちで作れるのではないか、と思いました」と鈴木は当時を振り返る。

アイディアを現実に

ローカル5G市場に国内ベンダーとして参入する。その夢は、ネットワークに関わるプロフェッショナルの心を動かした。
「『グローバルベンダーが割拠する市場を、“国内ベンダー製品”で席巻する。』この志に、業界で著名な方が共感してくださり、プロジェクトに参加していただくことになりました」。新たな仲間の登場により開発は加速。一部の設備についてはベンダーとパートナーシップを結んだ。残るは、この実験的な取組に協力してくれるお客様だけ。
「日進月歩のテクノロジーを扱う以上、業界の先頭集団にいなければなりません。最先端の技術を取り入れながら、高速で試行錯誤を繰り返していくためには、お客様の協力が必要不可欠。やがて、その知見が市場をリードする強みになります」。実証実験用製品の価格は、数千万円から段階的に1000万円以下まで下げていく。このコンセプトが、お客様の心を大きく動かした。
「2019年度の申込みは数件。実証実験である以上、お客様も大きなリスクを背負うことになります。しかし、それでも私たちの考えに賛同してくださったお客様がいらっしゃることが新規事業を継続する原動力になりました」。2021年4月、鈴木たちは製品版をリリース。悲願の実証実験をスタートさせることになる。

国内ベンダーとして実績を

2021年度、実証実験製品の問合せは約300件に達した。当然、検証段階である以上、APRESIA Systemsの投資額も相当なものになる。
「当社のイーサネット製品事業が強固な基盤を築けていることも大きいと思います。土台がしっかりしていなければ、ジャンプもできませんから」と語る鈴木は、もうひとつの成功要因としてエンジニアたちの存在を挙げる。
「彼らは未知の領域であっても粘り強く技術知識を吸収し、実証実験の現場に張り付いて課題解決に全力を尽くしてくれています」と現在進行形の苦労を労う。
「今はまだ想定していた性能に追いつけていませんが、これから試行錯誤を繰り返すなかで理想の姿を実現していきたい。そして、内製化できる領域を増やすことで、最終的には高品質かつ低価格な国内ベンダー製品を日本全国に届けていきたいと考えています」。そのためにも、APRESIA Systemsは成功事例、ユースケースをつくらなければならない。鈴木たちプロジェクトチームは、こうしている今もローカル5Gの成功に向けて一歩一歩、前進している。